ドイツ人が「孫の顔が見たい」と言わない理由
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ドイツ人が「孫の顔を見たい」と言わない理由とは
日本では女性がある年齢になると、親からの「孫の顔が見たい」プレッシャーがかかってきますよね。
女性同士集まると、よくその話題になります。プレッシャーのかけ方は親それぞれで、「あなた、いつまでフラフラしてるの? ちゃんと結婚して、孫の顔を見せてちょうだい」と直球で娘に迫る親もいれば、「お友達はね、みんな孫がいて楽しそうなのに、私にだけいないの~(泣)」と自ら進んで被害者になってしまう親もいます。
また、娘には表向き「あなたの好きなように生きるのが一番!」と言いながら、ふとしたところで「本音」をもらしてしまう親も。普段はリベラルな親を装っているのに、テレビを見たり同窓会に行ったりすると、一番の関心ごとは結局「人の結婚」そして「子供を産んだか」だということが娘にバレてしまったり。
いずれにせよ、親の、特に母親のそういった「ふとした本音」を知ると、娘としては、今までの「あなたの人生なのだから、好きに生きていいのよ」というのはいったい何だったの? と複雑な気持ちにもなりますよね。
やはり日本の親は息子よりも娘にこの手のプレッシャーをかけることが多いようです。まあ女性の場合、子供を産める年齢が限られているから、というのもあるかと思いますが……。
こういった親の「期待」、そう「孫を持つことの期待」が娘の恋愛にもある種の影響を与えているようです。というのは、これを無視して独身でいる人は別として、「親の気持ちに応えてあげたい」と思う女性の場合は、必然的に「子供の父親としてふさわしい性格や経歴の人」、つまり、ゆくゆくは結婚に向きそうな人を恋愛の対象として選ぶからです。
一方、ドイツでは、「親に孫がほしいって言われた」と話す女性にはあまり会いません。そこは、個人主義のドイツ、「娘の恋愛は娘の選択」という大前提が親の側にもあるのでしょう。
でも実はそんな大前提よりも、実際には親自身(娘が35歳だとすると、親も60代や70代の場合が多い)が恋愛に関してまだまだ現役なので、自らの恋愛に忙しい、というのもあるのです(笑)。
親が結婚していれば、当然結婚生活に忙しいですし、夫婦で南の島を巡るクルージングに出かけたり、夫婦で世界旅行をしたりしています(ちなみにこれは「結婚」という形をとっていない場合、つまり恋人はいるけど結婚していない場合でも同じで、その場合はパートナーといろいろ趣味や旅行に忙しいのですね)。
カップルによっては、自分たちの手で家(一軒家)の内装を変えるのに忙しかったりと、あくまでもドイツの60代、70代の女性たち(母親たち)の関心は「自分たちの生活」なのでした。
もしも30代の娘を持ったお母さん(60代や70代)がシングルの場合は、それこそ恋愛活動に忙しいので、娘に「孫!」などと言っている暇はありません(笑)。
「私も恋愛を楽しむし、娘や息子にも恋愛を楽しんでほしい」と思っている親がほとんどだと思います。
もちろん、孫ができたらできたで喜ぶ人は多いですが、でもそこは必ずしも「孫」中心ではないのですね。
ドイツでは孫がいないと人生がつまらない、とまで感じる人は少ない印象です。その背景には、ドイツは日本より「血」をあまり重んじない社会だということも関係しています。ドイツの60代70代の女性が、「小さい子が好き!」「小さい子供の面倒を見たい」と思ったら、ベビーシッターとして近所の子供の面倒を見るケースも多いです。
また、最近はご存じのようにドイツは難民が増えているので、難民の子供を相手にボランティアをする人も多いです。社会に出て自分が好きな活動をしていれば、必ずしも血がつながった孫がいなくてもよい、と考える人は多いですし、実際に「血のつながらない孫」をかわいがる人も多い印象。
たとえば、娘の結婚相手の連れ子(つまりは男が連れてきた前の奥さんの子供)を孫としてかわいがる、ということもよくあります。
こればかりは人の「気持ち」であり、感覚的なものなので、どうして日本には「孫がほしい」と感じる人が多いのか、そして、どうしてドイツではそうでもないのか、と説明をするのはけっこう難しかったりするのですが、ドイツの雰囲気のようなもの、少し伝わりましたでしょうか。
(『男の価値は年収より「お尻」!?』より構成)
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